何とはなしに、話半分

男子学生の考え事などをお送りするところ。

2020-01-01から1年間の記事一覧

寒波と痛み、蜃気楼の夜

寒空の下、僕は渋谷に向かって歩いていた。首都高の高架下を一人、少し昔の歌を車のエンジン音に紛らせて口ずさみながら、時折煙草の煙も吐き出して進んだ。寒さのせいで吐く息は白く、煙草があってもなくても同じような光景だっただろう。 先程までの三時間…

赤い実を一つ頬張れば

十月。長い間僕らの脳を茹だらせてきた夏の熱はとうに冷め切っていて、代わりに冷たい秋の空気が身を擽る時期だ。 今では台風なんて夏の風物詩でも何でもなく、行楽日和の折に現れては人々に嫌がらせをする秋の災厄になりつつある。 そしてその影に潜むよう…

涼しい風が吹いたら、もし今日君に会えるなら

九月も半分が過ぎ、湿気を多く含んだ風からは秋の気配が少しずつ漂ってきた。夜になれば半袖のままでは身震いをするようなひんやりとした空気が僕の体を撫でていく。 昨日は僕の隣にいた子も、今日の僕の横にはいない。昨日の僕が羽織っていたオリーブ色のジ…

外待雨だったら

夕方の天気予報は曇りだった。それでも夜の九時頃からは雨が降るかもしれないから、僕はやっとの事で寝癖だらけの髪の毛を整え、服を着替えて家を出た。 傘を持たずに僕はエレベーターを降りて外に出ると、ちょうどぽつぽつと雨が降り始めた。満員のバスの車…

下り坂とその先に、転がり堕ちていく僕と梅雨の日

実際のところ、二十歳そこそこの青年にはよくある悩みだと思う。 自分が何のために生きているのか分からない、とか、自分が何をして生きていきたいのか分からない、とか。 あるいは、生きていること自体が辛いだとか、独りでいるのが嫌で誰かに依存していた…

アルケミストと憂鬱、憧憬

今日は夜中から冷たい雨が降っている。その雨は地面いっぱいに水分を含ませるだけでは飽き足らず、空気も建物も人々の心までも、何もかもをぐっしょりと黒く重く濡らしていった。 そういった天気の中、僕は何時間目かも分からない活動時間を経て、冷めた紅茶…

夢にも視ない

「俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさや辛さも好きだ。夏の光や風の匂いや蟬の声や、そんなものが好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ。」 僕は明け方の五時過ぎに友人の家を出た。晴れた春の朝は空気が澄んでいて、もうほとんど散ってしまった桜の花が…

由縁なき所以

東京都などの地域に緊急事態宣言が発動された。オフィスでの仕事やライブハウスの営業の自粛が要請され、より一層人々は液晶画面の中に娯楽を求めるようになる。 かくいう僕も一日中液晶画面からの光を目に浴びて過ごした。国が緊急事態だといえば社会はすぐ…

融け、散り、褪せ行く

強い風が窓をしならせる音で目が覚めた。 窓の外では干していたタオルが飛ばされまいと必死に物干し竿にしがみついている。 思えば今週はずっと天気が悪かった。気圧は低く、寝ても覚めても頭が重い。 唸る隙間風の音が、僕の身体の悲鳴のように聞こえた。 …

春のおとづれなし

おみくじによく「待ち人」という欄があり、そこで「音信(おとづれ)なし」のような文言が書かれていることがある。 この「おとづれ」は連絡という意味で使われている。どうでもいいが僕はみなみけで中学生ぐらいの頃に知った。 三月も折り返し地点を過ぎ、…

好きな漫画の話とか

飽きっぽい性格が自分の中で一番嫌いなところだろう。 案の定ブログの更新も頭の片隅にはありながら、手をつけずに年が明け、さらに二月も終わろうとしている。 しかしながら、前回の更新の後から今に至るまでに、僕には一つの進歩があった。 大学院の試験に…