何とはなしに、話半分

男子学生の考え事などをお送りするところ。

laundry

夕方に降り出した雨は、どうやら朝まで降り続けるようだ。大粒の雫が信号機や街灯に照らされてやけにゆっくりに見える。僕は外に干せない洗濯物を抱えて近くのコインランドリーに来ていた。タオルを乾燥機に放り込んで百円玉を二枚入れる。残り時間を示すデ…

鳴り響く踏切、列車の向こう、振り向いた誰か

今にも雨が降りそうな曇り空だった。あるいは、既に雨が一頻り降った後なのかもしれない。とにかく、そんな空模様だった。雲の切れ目から差し込む日光が、大気に架かるレースのカーテンのように煌めく。僕は二日ぶりにまともに外に出て、湿気で満ちた晩夏の…

1K, To go, Laundry

僕は7畳にも満たない1Kの部屋で一人、夜食とも言えない粗末な食事を作ってそれを胃に送り込んだ。時刻はたぶん、朝陽が昇る少し前だった。随分と味気ない。食器を片付けて熱い紅茶を淹れる。部屋を暗くして音楽をかける。目を閉じると僕は生温い泥の沼に沈ん…

空っぽになるなら、埋めなくてもいいのに

四月までの僕に比べたら、今の僕は相当に充実していた。吐き出したくなるくらいの仕事に埋もれ、笑顔の絶えない仕事仲間にも恵まれ、頑張り屋で可愛らしい恋人もできた。 目の前のものをすべて巻き込みながら流れ出す氾濫した川の水のごとく、綺麗なものも汚…

寝息のかかるその距離に

僕は壁にもたれながら彼女と電話していた。時刻はすでに深夜の二時を回っていて、二人とも起きているのか眠っているのか音声だけでは判別がつかないほどに疲れ切っていた。 彼女はここ最近の数週間、仕事が上手くいかずに落ち込んでいた。僕はそれを見るのが…

A stray jaguar, Lodestone, Silver lining

いつもより少し早めに目を覚ますと、外は雲もほとんど出ていない気持ちのいい晴れ空だった。ここ数日間は雨が降り続け気が滅入るような肌寒さだったから、今日ぐらいは、と珍しくきちんとした朝食を取った。シャワーを浴びる代わりにバスタブに湯を張り、森…

金木犀と夏の残り香、まだ少し硬い柿を齧る

今日は朝から天気が良かった。いつもよりすっきりと目が覚めたから、布団を干してシャワーを浴び、久しぶりに散歩に出かけた。 長袖のTシャツを着ていたが、袖を捲っても歩いていると額には汗が滲む。ずいぶんと涼しくなった様に思っていたけど、まだ夏の面…

細胞は入れ替わっていくけど僕はこのまま

僕を形づくってきたもの。思い返してみればたくさんのものがある。 サッカー。中学生になりたての頃はバルセロナのサッカーに憧れた。その次はイングランドのプレミアリーグに。僕の頭の中ではチームの司令塔として活躍するシーンがロングランで上映されてい…

壁と窓ガラス、そして冷たいサラダ

まだ少し先のことだろうから、と思っていたのに、もう三月も終わりに差し掛かっている。僕はまた決断を先延ばしにして、惰性と慣性のままに時を過ごしていた。 大学院を休学して、半年が経った。僕は何かを変えることも、何かを決めることもできず、そして何…

過去に潜り、朝日に託し

僕は最近夢中になっていたアニメを見終わり、次の餌を探し回るかのようにノートパソコンの画面を睨んでいた。 僕が生まれた頃から放送されている古いシリーズ物のアニメを見つけ、僕は懐かしさと娯楽を求めてそれを再生する。ざらついた感のある映像と古臭い…

寒波と痛み、蜃気楼の夜

寒空の下、僕は渋谷に向かって歩いていた。首都高の高架下を一人、少し昔の歌を車のエンジン音に紛らせて口ずさみながら、時折煙草の煙も吐き出して進んだ。寒さのせいで吐く息は白く、煙草があってもなくても同じような光景だっただろう。 先程までの三時間…

赤い実を一つ頬張れば

十月。長い間僕らの脳を茹だらせてきた夏の熱はとうに冷め切っていて、代わりに冷たい秋の空気が身を擽る時期だ。 今では台風なんて夏の風物詩でも何でもなく、行楽日和の折に現れては人々に嫌がらせをする秋の災厄になりつつある。 そしてその影に潜むよう…

涼しい風が吹いたら、もし今日君に会えるなら

九月も半分が過ぎ、湿気を多く含んだ風からは秋の気配が少しずつ漂ってきた。夜になれば半袖のままでは身震いをするようなひんやりとした空気が僕の体を撫でていく。 昨日は僕の隣にいた子も、今日の僕の横にはいない。昨日の僕が羽織っていたオリーブ色のジ…

外待雨だったら

夕方の天気予報は曇りだった。それでも夜の九時頃からは雨が降るかもしれないから、僕はやっとの事で寝癖だらけの髪の毛を整え、服を着替えて家を出た。 傘を持たずに僕はエレベーターを降りて外に出ると、ちょうどぽつぽつと雨が降り始めた。満員のバスの車…

下り坂とその先に、転がり堕ちていく僕と梅雨の日

実際のところ、二十歳そこそこの青年にはよくある悩みだと思う。 自分が何のために生きているのか分からない、とか、自分が何をして生きていきたいのか分からない、とか。 あるいは、生きていること自体が辛いだとか、独りでいるのが嫌で誰かに依存していた…

アルケミストと憂鬱、憧憬

今日は夜中から冷たい雨が降っている。その雨は地面いっぱいに水分を含ませるだけでは飽き足らず、空気も建物も人々の心までも、何もかもをぐっしょりと黒く重く濡らしていった。 そういった天気の中、僕は何時間目かも分からない活動時間を経て、冷めた紅茶…

夢にも視ない

「俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさや辛さも好きだ。夏の光や風の匂いや蟬の声や、そんなものが好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ。」 僕は明け方の五時過ぎに友人の家を出た。晴れた春の朝は空気が澄んでいて、もうほとんど散ってしまった桜の花が…

由縁なき所以

東京都などの地域に緊急事態宣言が発動された。オフィスでの仕事やライブハウスの営業の自粛が要請され、より一層人々は液晶画面の中に娯楽を求めるようになる。 かくいう僕も一日中液晶画面からの光を目に浴びて過ごした。国が緊急事態だといえば社会はすぐ…

融け、散り、褪せ行く

強い風が窓をしならせる音で目が覚めた。 窓の外では干していたタオルが飛ばされまいと必死に物干し竿にしがみついている。 思えば今週はずっと天気が悪かった。気圧は低く、寝ても覚めても頭が重い。 唸る隙間風の音が、僕の身体の悲鳴のように聞こえた。 …

春のおとづれなし

おみくじによく「待ち人」という欄があり、そこで「音信(おとづれ)なし」のような文言が書かれていることがある。 この「おとづれ」は連絡という意味で使われている。どうでもいいが僕はみなみけで中学生ぐらいの頃に知った。 三月も折り返し地点を過ぎ、…

好きな漫画の話とか

飽きっぽい性格が自分の中で一番嫌いなところだろう。 案の定ブログの更新も頭の片隅にはありながら、手をつけずに年が明け、さらに二月も終わろうとしている。 しかしながら、前回の更新の後から今に至るまでに、僕には一つの進歩があった。 大学院の試験に…

十一月を振り返る回

今日で十一月も終わり、今年も残すところ三十日程となった。 今月はなかなか怒涛の三十日間だった気がするので、ざっくりと振り返ってみる。 ハイライトとしては、バイトで息が詰まり現場を変えたことと、大学院に出願したこと、それから京都に行き写真を撮…

唐突なカメラ購入検討記事

いきなりだけど、カメラを買おうとしている話をする。 これまでの記事と全くテイストが変わってしまうけど、今僕の脳内のほとんどを占めている話題だからアウトプットしたくて仕方がない。 文章もかなり雑だけど許されたい。 * * * 本格的なカメラが欲し…

溶解の仕業

月曜日だというのに大学の授業も仕事も無いから未だに夏休みが終わっていないのかと錯覚するような一日だった。逆に言えば、まだ夏休みが続いているような錯覚をしていたからこそ、こんな過ごし方をしてしまったのかもしれないけれど。 結局八月六十二日だ。…

八月六十一日

あらゆる歌や物語の中で、永遠に続く夏が描かれることがある。いわゆるエンドレス・エイトというものだ。 八月がずっと続くとしたら、今日は表題の通り八月六十一日だった。 僕にとって夏休みは苦痛でもあった。 特に今年はやるべきことがあるような無いよう…

夏の終わりにブログの始まり

長い夏休みがついに終わった。世間でも時折恨みを込めて言われていることだが、大学生の夏休みは長すぎる。 ある者はアルバイトと旅行に時間を費やし、ある者はひたすら勉学に打ち込み、ある者は恋人との熱く甘い時間に身も心も溶かし、ある者は生きている意…